SAHO TERAO / 寺尾紗穂

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職質に思う

 最近昼間から職務質問をしている警官たちをよく見かける。呼びとめられた人は、DJみたいなキャップをかぶっていたり、見るからに変わった格好をしていたりする人もいるが、何故この人が呼びとめられたのか、と良くわからないケースも多い。いずれにせよ、カバンの中をくまなく荒らされ、5分だか10分だかの時間を無駄にさせられている。
 知り合いの音楽家も、コロナ禍で引きこもりに拍車がかかり、きこりか炭焼きか、というくらいにひげやあごひげが伸びて、職質にしょっちゅう遭うようになったとぼやいている。車の後ろの楽器や機材をつんで夜中走っていると呼びとめられて、検査されることが多いという。失礼な話だなと思う。
「それってさ、調べて何もみつからなかった場合、失礼しましたって一言言うの?」
そんなことは言われた事がないという。人間を「なんとなく怪しい」という究極のルッキズム、偏見によって呼びとめ、どれだけ急いでいたとしても、貴重な時間を奪い取り、お前は不審であるという無礼な態度をぶつけられるなんてまっぴらだ。100歩譲ってそれが町の平和を守る行為であったとして、検査終了後には丁重な謝罪とクオカード500円分くらいの検査協力のお礼の気持ちを渡すべきではないだろうか。それくらい失礼な出来事だと思う。
 亡父もよく職務質問にあっていたらしいというのは、父の死後、中条省平さんにお会いしたときに初めて伺ったのだが、父の場合、徹底的に弁論抗戦をして言い負かしていたらしく、ひっかかった警官もとんだ外れくじを引いたと思ったことだろう。しかし、本来それくらいの出来事だ!とどうにもこうにも腹立たしく思ってしまうのは、カエルの子というわけなのかもしれない。